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知り合いと友達は違う

●知り合いと友達は違う

三日目のテーマは「かけがえのなさ」です。皆さんにとって「かけがえがない」と思える人はいるでしょうか。

人が成長する上では、信頼できる人間関係がもっとも重要だと言えます。

十六年前に私がインド人の瞑想の師と共に日本に帰ってきて、たくさんの人に会っているうち気づいたのは「友達」がいる人がめったにいない、という事実です。友達とは「自分が嬉しかったときに、真っ先に伝えたくなる人」のことです。いわゆる精神世界にはまっている人は、友達が意外と少ない傾向にあります。

さびしい人が多いのです。知り合いは多いけれど、友達は少ない。

これは私がインドから帰ってきたときに気づいたことです。

●縁を絆に変えるには?

このエクササイズのテーマは「かけがえのなさ」です。

つまりかけがえのない人間関係をいかにして育むのか。

これは、「どうしたら縁が絆に変わるのか」というテーマとつながっています。

縁を絆に変えるためのポイントは、実は、いかにして自分が執着しているものから距離を取るか、ということに懸かっているのです。

例えば、自分ができる仕事がいくつかある。

どれを選んでもいいような気がするし、よくないような気がする。

或いは、会社においてどちらの上司を選ぶのか。

プライベートでどちらを恋人に選ぶのか。

こんなことは誰にでもよくあることだと思います。

この状態ではいつまでたっても迷いの世界です。

つまり、執着という重力の世界にいるわけです。

執着の世界。片方を選ぶと、もう片方を選べない。後で後悔したくない。そうした恐怖をいかにしてはずすか。

執着によって生まれる恐怖が、正しい判断を不可能にしているわけです。

●理解に基づいた行動が、しがらみを断ち切り、絆を深める

縁を絆に変えるためには、つまり本当にかけがえのない人間関係を育むためには、重力から、即ち「しがらみ」から、関係性が壊れることへの恐怖から、選択や行動をしないことです。

「たとえそれで関係性が壊れても仕方が無い」こういった決意と覚悟がどうしても必要なのです。

私は22歳の頃に当時付き合っていた女性が妊娠しました。1ヵ月後にはふたりでアメリカへ行くことが決まっていました。二人はまだ若くて、これからどうなるのか全く分からない。

そんな状態で子供を堕ろすか、生むか。この選択を迫られたわけです。

物凄い葛藤の中で、どちらを選んでも後悔するだろう自分が見えました。さて、どうしたものか。

その時私は、瞑想を通して、必死になって、どちらを選択しても、その結果がどうなろうとも、自分に対して微笑んでいる当時の私が信頼する師匠の顔を発見しようとしたのです。

そして一瞬、深刻でない状態の自分になった時、悔いのない選択が見えたのです。恐怖から生まれる選択は、悔いを残します。

対象から距離を取ることで、対象に対する執着をはずし、そこから見えた理解に基づいて行動すること。これが縁を絆に変える方法でもあるのです。

もちろん、絆にならない縁を切ることも重要です。本当に自分らしく生きると、友達が減ります。と言うか、本当の友達とそうでない人とが整理されるのです。そして、残った友人との繋がりは深くなります。濃くなります。

 

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